国益
中国が盛んに日本に揺さぶりをかけている。尖閣列島での漁船衝突事件で日本政府が船長を逮捕したことに反発して、閣僚級以上の交流を禁止する措置をとったようだ。中国国内の反日感情が高まればデモが行われる。しかし、このデモが曲者なのだ。今の中国では政府批判に矛先が向いてしまう可能性がある。
それを避けるために中国政府は、夜中に宇野中国大使を呼びだしたりして国内向けのパフォーマンスを演出している。自分たちに不都合な部分は一切コメントせず、時には歪曲してまでも執拗に日本を攻撃し国民のガス抜きを図っているのだろう。今朝の新聞に元在日中国大使館勤務経験のある商務省の役人が、「沖縄はもともと中国の領土で明治政府が清国から奪い取ったものである。今でも住民の75%が日本からの独立を望んでいる」というような論文を中国の新聞が掲載したという記事があった。
これが国益というものなのであろう。国の為になることなら、間違いと分かっていても、正義と反していても、敢えて国の利益の為に主張し、行動するのが国益なのである。日本のように愚鈍なまでに性善説に立ち、他国に誠意を期待するばかりでは好いように利用され、身ぐるみはがされてしまうのがオチなのだ。国益を遂行する者は、時として悪魔の心を持たなければいけない。
ロシアが北方領土をいまだ日本に返還しようとしないのに、アメリカは沖縄を返してくれたとアメリカに親近感を抱く日本国民が多いのも事実だろう。だがホントにそうだろうか?アメリカは国益を取ったのではないかとオレは思う。あのまま沖縄を占領していれば、日本国内だけではなく、いずれ国際的にも反感を招く。それより返還することにより日本に恩を売り、国防という大義名分のもと、自由に基地使用を続け、屈辱的な地位協定まで日本に押し付けた。
その上、思いやり予算と称して巨額の金を毎年日本からむしり取っている。アメリカはこれにより、自分たちの軍隊をただで養えることが出来るようになった。金のなる木を手に入れたのだ。結果、返還前より遙かにアメリカ側が有利になった。それこそが国益なのだ。それなのに歴代の自民党総裁は、これで日本を守ってもらえるんだから安上がりだろうと、国民をだまし続けてきた。
しかし、昨今のアメリカと中国の接近ぶりを見れば、オレでも日米安保は幻想だと云う事が分かる。アメリカは、北方領土に関しても、北朝鮮問題にしても、なんら日本の為に行動はしない。いや、むしろこれらの問題が進展しないのはアメリカ自信が望んでいることなのだろうと思う。世界には絶えず緊張地帯を作っておく必要がある。そこには武器を始めとする大きな経済需要がある。それが国益なのだ。だから日本がロシアと仲良くなるのも、朝鮮が統一されるのもアメリカにとっては困ることなのだ。そのへんが分からないと国益という観念も理解できないと思う。
当然自国の国益を追求すれば他国の国益を侵害することがある。その最たるものが戦争だろう。しかし、国益のために始めた戦争が国民を苦しめることもある。アメリカを見ればいい。ベトナム、イラク、アフガニスタン、、、延々と続く憎悪と浪費の連鎖、、、これで果たしてアメリカは国益を得たのだろうか?
さて、翻って日本はどうだろう。先般の民主党の代表選を見ても猿山のボス争いのような低次元の政争が続いており、党益ばかりで国益という観念を持っている政治家は少ないように思える。政治家だけではない。今日本は未曽有の危機的状態になっているのに、企業は企業益、役人は省益、そして国民は私益に走り、国はバラバラ状態だ。
日本は憲法九条を金科玉条として掲げ、世界で起こる紛争にかかわらず、ただただひたすら働いてきた。その結果、戦争にも巻き込まれず、世界中からエコノミックアニマルと蔑まれながらも驚異の経済復興を成し遂げ、戦後の繁栄をむさぼってこれた。オレはそこに大きな落とし穴があったように思えてならない。日本はその結果、世界から信頼され、尊敬される国になったのだろうか?国の品格、いや国民の品格はどうなったのだろうか?
その日本は今、自民党時代から続く不毛の政治を変えることが出来ず、経済も不況にあえいでいる。日本のシステム全体が機能不全に陥りつつあると言ってもいいかも知れない。そろそろ日本も真剣に「国益」を考えなくてはいけない時期に来ているのではないだろうか