七夕と鰻

昨日から義母のお見舞いに東京に行ってきた。昼前に自宅を出て、三時前にカミさんの実家に着いた。いや~暑かった。クーラーを強めにしてもらい一息ついたところで、南千住まで出掛けた。

カミさんの従兄と駅で落ち合い、三人で向かったのは「尾花」という鰻料理の店だった。線路沿いの人通りの少ない路地を暫く歩いていたら、突然人の群れが見えだした。「あそこが尾花よ」とカミさんが指さした。その先には軽く百人を超える人達が道路まではみ出して並んでいた。この店は並ぶことを覚悟しなければいけないらしい。

取り敢えず行列の最後尾に並んだ。時間は夕方5時をちょっと過ぎたばかりだ。仲居さんがメニューを持って確認に来た。ここで注文をしたらもう追加は出来ないという。鰻重を注文したついでに何時間かかるか聞いてみたら二時間はかかるという。言葉は慇懃無礼だが、嫌なら帰ってもらって結構ですよ、と言わんばかりの態度がありありで些か鼻白んでしまった。

カミさんが「どうする?」と聞いてきたがオレは即座に「待つよ」と答えた。そう!オレは待つのが大嫌いで、どんな美味しいと評判の店でも10分以上待てない短気な男である。そんなオレが待つと言ったのでカミさんも怪訝な顔をしたが、今日はどうしても待たなければならない理由があった。

義母の入院している病院で、患者が七夕の短冊を書いて院内に飾ったそうだ。みんなが早く元気になるようにとか、早く退院できますように、と書いてる中で、義母の短冊が一人異彩を放っていて話題になったそうだ。短冊にはこう書いてあったという。

「ウナギが食べたい」

それも「尾花」の鰻だそうだ。それを聞いてオレは思わず噴き出したが、義母の生きる力の強さを見事に表している話だと思った。だからどうしても鰻を買っていかなければならない。2時間だろうが3時間だろうが待つ覚悟を決めていた。

オレ達の後ろに10人ほど並んだところで仲居さんが「本日売り切れ」の看板を持ってきた。それでも次から次に行列に並ぼうとやってくる。そして看板を見て、恨めしそうに帰って行く。まだ5時30分だ。オレ達も10分遅れたら危なかった、、、それからホントに2時間並んだ。ひと組出ればひと組入る。オレは義母の為にジっと耐えた。

案内されたのは道場のような広間だった。そこに小さなちゃぶ台が並びみんな座って食べる。東京はこういう店が多い。確か神田の蕎麦屋や鳥すきの店もそうだったし、浅草のドジョウ屋も森下のさくら鍋の店もそうだった。

さっそく、さっそく、ビールと鰻ザクと鰻巻を注文する。凍る寸前のギンギンに冷えたビールが運ばれてくる。それを飲みながら食べた鰻ザクと鰻巻は思ったよりはるかに美味い。オレは冷酒を追加した。思わず白焼きを食べたくなったが、もう追加の注文は出来ない。

40分程待って鰻重が運ばれてきた。全く焦げ目のないきれいな蒲焼がご飯の見えないほど並んでいる。オレは少し焦げ目のある方が好きだけど、ひと箸食べてみて驚いた。タレは甘目を抑えたオレ好み、しっかり蒸してあるのでびっくりするほど柔らかい。オレは一気にかっ込んだ。2時間ちょっと並んで、1時間ちょっとで完食。義母へのお土産をしっかり持って上機嫌で帰宅した。

今日は昼の1時頃にカミさんと病院に出かけた。義母はオレの顔を見て嬉しそうに微笑んだ。思っていた以上に元気だった。余り自分から喋ることはないが、話しかけるとうなずいたり簡単な言葉で答える。とてもこの前まで生死の境をさ迷った人とは思えない。

それでも看護師さんに聞いたら余り食べてないようだ。「鰻買ってきたよ」とカミさんが言ったら目が輝いた。みんなから良かったね~と言われ、一気に顔がほころんだ。夕食の時にカミさんが食べさせるように病院の許可を貰った。

それから2時間ほど病院にいて静岡に帰ってきた。天神屋で弁当を買い簡単な夕食を済ませ、カミさんに電話した。「どう、鰻食べた??」「喜んで食べたよ!」オレはふと思った。もしかしたら鰻を美味しく食べるために今日はあまり食べないでいたのかな?と、、、

さぁ、今日もまたまたプシューっと乾杯だ!!






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2010年07月20日 Posted by臥游山人 at 00:05 │Comments(0)日々雑感

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